住所 | 〒350-0208 埼玉県坂戸市戸宮609番地 |
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病床数 | 112床(回復期リハビリテーション病棟:60床、医療療養病棟:52床) |
全職員数 | 207人(2020年11月25日現在) |
病院のホームページ | http://www.wakaba-group.or.jp/wakabahospital/index.html |
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昭和62年埼玉県坂戸市に設立された若葉病院は、医療と介護の連携を図り地域社会に貢献できる病院として、内科·リハビリテーション科·整形外科を中心とした医療を提供されています。地域の中核病院として近隣の急性期病院·施設からの患者受け入れが多いのも特徴で、多職種によるチーム医療推進のため院内外の連携を図り、在宅などへの退院支援にも精力的に取り組まれています。
2品のうち、先に存在を知ったのはプライムウォッシュ薬用洗浄料でした。以前は慢性創傷や陰部などの洗浄に手洗い石けんなどの洗浄剤を使用していましたが、洗浄後に洗浄剤を流しきれずに残ってしまう場合があり、すすぐために大量の水が必要なこともネックでした。そこで、より使いやすい製品を探していた時にプライムウォッシュ薬用洗浄料の存在を知り、導入を検討しました。
また、以前から当院で褥瘡や難治性潰瘍を有する患者さんに対して通常の創傷ケアや処置をおこなっても、なかなか改善しない場合がありました。その対策としては、全身状態や栄養の管理、エアマットや免荷装具の整備が挙げられます。しかし、それらを加味しても、創面観察をすると明らかな感染や壊死兆候がない創傷にも関わらず、肉芽形成や創傷の縮小がみられないことがあります。そういった場合、バイオフィルムという創傷治癒の阻害因子があることは知識として知ってはいたのですが、バイオフィルムをどの様に把握するのかわかりませんでした。
そのような時に、プライムウォッシュ薬用洗浄料と同じメーカーからバイオフィルム検出ツールという新機軸の製品が出ているということで、興味を持ったことがきっかけです。
以前の洗浄剤は創面のぬめりを洗い流すことが困難でした。また、泡切れが悪く、すすぎには大量の水を要し、洗浄に時間もかかっていました。そのため、時間が無くてぬめりを落としきれずに次の処置に入らざるを得ないこともありました。
プライムウォッシュ薬用洗浄料は、泡切れがよくさっぱり洗え、創面のぬめりをきれいに落とすことができます。すすぎの水量も多くを必要としないため、従事者にとって処置の時間短縮にもつながったと実感しています。さっぱり洗い上げるのと保湿するというのは時に相反する要素かと思いますが、プライムウォッシュ薬用洗浄料はそのバランスが良い洗浄料だと思います。また、皮膚が弱い人に用いて悪い結果につながった例もなく、安全に使えています。
検体の採取方法は、洗浄した創部に約10秒メンブレンシートを押し当てるのみで、患者さんへの負担は非常に少ないと思います。また、従事者が行う染色·脱色などの行程も、2-3回行えばそれ程難しくないと感じました。ベッドサイドなど臨床現場で実施することができ、バイオフィルムの有無の検出に要する時間は約2分と、結果が早く出るのがいいですね。同じ創傷に対して異なるタイミングで検出した事例を比べますと、濃淡の比較も出来ます。メンブレンシートが色濃く染まった事例は、創傷の見た目の状態も良くないと感じています。
既存洗浄剤とプライムウォッシュ薬用洗浄料を比較すると、プライムウォッシュ薬用洗浄料使用後の方が、創傷の見た目においても若干清浄化されているように見え、バイオフィルム検出ツールの染色結果においても、洗浄前後を比較するとプライムウォッシュ薬用洗浄料使用後では色味が若干薄くなっているように見えました。
当院では検出されたバイオフィルムを低減·除去する手段として、①外科的デブリードマン ②ヨウ素含有軟膏の使用 ③抗菌性創傷被覆·保護材の使用 といったものが挙げられます。一例として、外果部の褥瘡に対してヨウ素含有軟膏使用前と使用開始から2週間経過後にバイオフィルム検出を行い、バイオフィルム検出ツールの染色結果で色味の低減が見られたと同時に創傷の状態も改善された症例を経験しました(写真1~5)。
これは、バイオフィルムの存在が認められた創傷に対してヨウ素含有軟膏を用いることで改善につながるということを示唆しているのではないか、と捉えています。このことから、外用剤を含め治療内容を決定·変更する検討材料として、もしくは改善を確認する手段として、このようなバイオフィルム検出ツールを使えるというのは、分かりやすいですね。各々の創傷用材料や薬剤にも特徴があり、どれか一つをずっと使い続ければいいわけではありません。処置して1週間後·2週間後にもう一度バイオフィルム検出ツールで評価して、その結果に基づいた選択をする。このように創傷の経過を追うためのツールとして有用ではないかと考えます。
先述したバイオフィルムの存在を認めた創に対する処置·手段以外にも、たとえば洗浄の効果についてもさらに見てみたいです。そして、その他の薬剤や創傷用材料などを用いて、バイオフィルムを検出した創にどのような効果が表れるかを確認したいです。また、バイオフィルム検出ツールが材料の適用に応じてどのように反応が変わるか、症例を重ねていき、その関連などを調べていきたいと思います。さらに、バイオフィルム検出ツールを用いた当院なりの創傷バイオフィルムの管理·治療方針を提案できれば良いと考えています。
当院は高齢で皮膚の弱い患者様や合併症が多く自力で起き上がれないような患者様が多く、そのような患者様が保有する慢性創傷については継続的なケアが必要だと感じています。病院にいる間は適切な洗浄や創傷管理を行い改善していく一方、施設や自宅に帰って創傷が悪化してまた病院に戻ってくる…ということもあります。施設や自宅でも継続できるケアをいかに推進するか、ということが課題であり、在宅受診に移行した後も、ケアを続けやすいような処置を浸透させることができたらと思います。
また、当院は慢性期の病院であり創傷を有する患者様が急性期の基幹病院に比べて多いわけではないですが、“こうしたらうまくいったよ”という診療例を積み重ねていきたいです。たとえば現在、バイオフィルム検出ツールを使用した際に、経過が分かるような記録用紙を自作で用いています(写真6)。
こうした管理方法の例のように、他の病院や医師にとっても分かり易いような創傷管理のプロトコルづくりに貢献できたらと思います。
今回のお話を通じて、病院や患者様の状態に応じた治療手段やケアを追求する姿勢を伺うことができました。創傷を治癒に導くためには定期的なケアと適切なアセスメント(評価)が必要ですが、弊社でも様々な状態に応じた製品·サービスを提供してまいりたいと思いを新たにいたしました。